目 次
死亡退職金は相続財産か
相続発生後、いつまでにどのような事をするのか、簡単に列記します。
《期限のあるもの》
①死亡届(7日以内)
②相続放棄・限定承認(3ケ月以内)・・・必要な場合のみ
③準確定申告(4ケ月以内)
④相続税申告・納税(10ケ月以内)・・・対象者のみ
⑤遺留分減殺請求(1年以内)・・・必要な場合のみ
⑥未分割財産の分割(3年以内)・・・対象者のみ
《主な手続き》
相続人の確定
遺産の調査
遺産分割協議(遺言書のない場合)
預貯金の名義変更・解約
不動産の相続手続き
など、これ以外にも多くの手続きをしなければなりません。
法定相続情報証明制度の認証分付き法定相続情報一覧図の写しが平成29年5月29日から始まりました。戸籍謄本・除籍謄本等を収集し法定相続情報一覧図を作成し申出書を法務局に提出することにより登記官による「認証分付き法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。従来の戸籍の束に代わりとして、各種相続の手続きに利用できます。
例えばこんなものに利用できます。
☆被相続人所有の相続不動産の登記
☆被相続人名義の預金の解約・払戻
当事務所では、
相続が発生した際に相続人調査をし、相続関係説明図(法定相続情報一覧図)作成のご依頼して頂いた場合、
被相続人の最終住所地・本籍地ご依頼の相続人の住所地などが東京法務局八王子出張所・立川主張所管轄の八王子市,立川市,昭島市,日野市,武蔵村山市,東大和市,国分寺市,国立市各市について、法定相続情報(認証分付き法定相続情報一覧図の写し)の取得も承っています。
遺言書は、亡くなられた方(被相続人)の最終意思ですので、通常その内容通りの相続がなされます。この場合、遺言書の種類によって多少手続きの手順が異なります。遺言証には、一般的に公正証書遺言、自筆証書遺言があります。
相続発生後すぐに遺言書通りに相続手続きを進めることができます。遺言書の内容が相続人の一部の遺留分を侵害している場合、侵害された相続人は1年以内に※遺留分減殺請求をすることができます。もちろんしなくてもいいです。
また、全員が遺言書の内容を変えた方がいいという場合は、遺言書と違う相続とすることもできます。それ以外は、遺言書の内容通りの分割となります。
自筆証書遺言が出てきた場合、家庭裁判所への※検認手続き後、上記と同様の手続きとなります。
※遺留分減殺請求:兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺言書でも侵害できない遺産に対する最低の取り分(遺留分)があります。この遺留分を請求できる権利が遺留分減殺請求権です。遺留分の請求権は、遺留分権利者が相続開始及び減殺すべき贈与・遺贈があったことを知ってから1年で時効となります。
※検認:「検認」とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など「検認」の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。公正証書遺言以外の遺言は、遺言の執行前に、家庭裁判所の「検認」を受けなければなりません。
相続人全員で話し合って相続分を決める(遺産分割協議)ことになります。
亡くなられた方(被相続人)がいたから様々なことがうまくいっていました。しかし、まとめ役の被相続人がいなくなると利害が対立し、遺産の分割協議ができないことも多いものです。法定相続分もありますが、法定相続分のとおりに相続しなければいけないわけではありません。また、分割ができる遺産ばかりではありません。土地・建物などの不動産は、分けられない典型です。
遺産分割協議には、大変な労力と時間を要します。まとまらず、訴訟に発展することもよくあります。また、遺産分割協議がされないままになってしまうこともあります。遺産分割協議ができないことが、空き家として放置される原因の一つであるとも言われています。
行政書士は、相続人全員の同意に基づいて遺産分割協議書の作成をサポートします。争いのある場合は、取り扱いをしていません。
相続が発生し、遺言書があり検認手続きが完了した(公正証書遺言の場合、検認手続きは不要)。しかし、遺言書に遺言執行者の指定がされていなかったり、遺言執行者が指定されていても既に亡くなっていたり、また、生きていても辞任等をしている場合、どうすればいいのでしょうか。
登記が必要な不動産について、遺贈が伴う場合と、相続人への「相続させる」という遺言の場合を考えてみます。
遺贈には、特定遺贈と包括遺贈があります。特定遺贈とは、相続財産のうち特定の財産を指定して譲渡する方法です。それに対して、包括遺贈は、相続財産の割合を指定して渡す方法です。どちらの場合でも、受贈者(遺贈を受けた者)は、どのようにすれば遺産を受け取ることができるのでしょうか。
特定遺贈が不動産の場合、受遺者と遺言執行者(または相続人)が共同で登記の申請をします。包括遺贈の場合も同様となります。登記義務者である相続人がいれば遺言執行者がいなくても登記はできます。遺言執行者も相続人もいない場合は、遺言執行者の選任が必要となります。
遺言執行者の選任は、家庭裁判所に遺言執行者選任の審判申立てをして行います(民法第1010条)。相続に関する利害関係人(受遺者・相続人・相続債権者など)であれば申立人となることができます。
「相続させる」の場合は、相続人が単独で登記できます。ただし、遺言と異なった相続人が移転登記してしまったような場合は、抹消登記をすることができる遺言執行者が必要となります。やはり、家庭裁判所に選任の審判申立てをすることになります。
「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の権利義務を有する」(民法第1012条1項)と規定されています。また、委任の規定が準用されています。
具体的に権利とは、遺言執行に関して支出した費用の請求や過失なく被った損害の賠償請求を相続人にする権利があります。また、遺言執行者としての報酬を請求する権利があります。報酬は、家庭裁判所が決定するほか、遺言で定めることができます。
お主な義務は、任務の開始・財産目録の作成交付・善良な管理者としての義務・報告・受取物等の引渡・補償などの義務があります。任務の開始義務は、就職を承諾したらすぐに任務を開始しなければならない義務です。報告義務とは、要求があった時には遺言執行状況を相続人に報告しなければならない義務です。
法定相続人が複数いる場合、遺言書で分割の禁止がされている場合を除いて相続人全員で協議して遺産の分割をすることになります。もちろん、遺言書があればその通りに相分割します。また、共同相続人全員の同意があれば遺言書内容と違った分割もできます。
遺産分割協議の当時者は、家庭裁判所に所定の期間内に相続放棄の申述をした者を除いた相続人全員です。包括受遺者(民法第990条)、相続分譲受人がいた場合はその者も当事者となります。
共同相続人全員ですので、行方不明や意思能力のない相続人も法定の手立てをすることにより参加しなければなりません。また、相続発生時に被相続人の配偶者が妊娠していた場合は胎児が相続人となります。胎児の出産を待って、未成年者の法定代理人をたてて協議に参加します。
協議で全員の合意ができれば、合意内容を記載した遺産分割協議書の作成をします。遺産分割協議書には、全員が記名または署名し、実印を押印し、印鑑証明書を添付します。
遺産分割の効果は、相続時にさかのぼって効力をもちます。
遺産は、遺言書があればその通りに相続がされます。遺言書は、被相続人の最終意思であるからです。しかし、相続人全員が遺言内容と異なる遺産分割をしたいとの意思がある場合もあります。そうした場合まで、遺言者の意思を尊重しなければならないわけではありません。
この場合、遺産分割協議書作成にあたって注意すべきことがあります。遺産分割協議書で、遺言内容について具体的に明記すべきです。遺言の内容を全員が正しく認識したうえで異なった内容の遺産分割をすることに合意したことを確認するためです。仮に遺言書の存在を知らない相続人がいて、遺言内容を知っていれば遺産分割協議書の内容に合意しなかったとみなせられる場合、遺産分割協議書が錯誤による意思表示であり無効とされることもあるからです。
遺産分割は、被相続人の全財産の分割について協議したものです。遺産分割後に新たに財産が出てきたら、再度、遺産の分割協議をやりなおさなければなりません。特に、新たに発見された財産が不動産である場合、遺産分割協議をしないで登記移転することはできません。
そこで、遺産分割協議書を作成に際して、新たな財産が発見された時のことも決めておくようにしましょう。
遺産分割協議書に、つぎのような文言を記載しておくことが考えられます。
新たに財産が発見されたら
①その分割を別途協議する。
②特定の相続人が取得する。
②´特定の相続人が取得する。ただし、その価値が○○万円以上であった場合は、その分割を別途協議する。
③新たに発見された財産が可分債権である時は、相続人間の相続割合を○○(比率)とする。
など
遺産分割協議がなかなかまとまらず、共同相続人のうちの1人が相続分を第三者に譲渡して遺産分割の紛争から離脱したとしたらどうすればいいのでしょうか。
譲渡人である共同相続人にとっては、遺産分割に時間がかかってしまうことから免れることができるので、譲渡したいと思うことは十分にあります。相続分の譲渡は、譲受人にとって共同相続人が有する権利義務を包括的に譲り受けたことになります。譲渡人が、遺産分割協議から離脱する代わりに第三者である譲受人が新たに包括受遺者的な立場として遺産分割協議に参加することになります。全くの他人が遺産分割協議に入ってくることになり更に混乱することになります。
そこで、相続分の取戻権として民法第905条第1項で「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。」として第三者の介入による混乱を防ぐ規定を設けたのです。ただし、取引の安全のため除斥期間として同条第2項に「前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。」としました。1カ月という除斥期間は、かなり短いです。しかも、譲渡時から1カ月と考えられていますので取戻権を実際に行使する時は、注意を要します。
また、取り戻しのためには、いくら払えばいいのでしょうか。譲渡をした時の価格ではなく、取戻権を行使する時の相続分の評価額プラス譲渡に要した費用となります。
相続財産の分割のため、遺産分割協議をしたいが相続人の中に行方不明者や海外在住者がいて遺産分割協議を行うことが困難ということがあります。こうした場合、どのようにすればいいのでしょうか。
行方不明者がいる場合、行方不明者を不在者として家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てをします。不在者管理人は、不在者の財産管理をする権限があります(民法第103条)。この権限以外の処分行為をする場合は、家庭裁判所に権限外行為許可審判の申立てをします(民法第28条)。遺産分割協議への参加は、権限外の処分行為となります。不在管理人は、事前にこの許可を得て遺産分割協議に参加することになります。なお、不在者管理人は家庭裁判所の求めに応じて不在者の財産状況や管理の計算を報告する義務があります。
海外在住者がいる場合は、遺産分割協議で何が困るのでしょうか。遺産分割協議書には、共同相続人全員の同意が必要です。同意したことは、実印を押印し印鑑証明書を添付することで証明します。印鑑証明書は、市区町村に実印を登録して、その市区町村で発行してもらいます。しかし、海外にはこうした制度がありません。そこで、印鑑証明書の代わりに海外移住者にはサイン証明という制度が設けられています。
現地の日本領事館に行き、係員の前で遺産分割協議書に署名と拇印を押します。署名と拇印が本人のものであるというサイン証明書を発行してもらうことで印鑑証明書に代えることができます。サイン証明書は、遺産分割協議書と綴られて割印されます。
配偶者は常に相続人になります(民法第890条)。ここで言う配偶者とは、婚姻届けを出している者のことを言っています。民法では、婚姻は戸籍法が定める届出を行うことで効力を生ずることになっています(民法第)。したがって、婚姻届出されていない内縁の配偶者には相続権がありません。ただし、相続人がいない場合、特別縁故者として財産分与を申立てする余地はあります(民法第958条の3)。財産分与が認められるかは、家庭裁判所の裁量となります。
第1順位の相続人は子です(民法887条)。現在の民法(900条)では婚姻関係のある夫婦間に生まれた子供(嫡出子)とそうでない子供(非嫡出子)の法定相続分は等しいものとなります。以前は、民法900条4号ただし書前段の規定で非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1でした。
平成25年9月4日、最高裁大法廷の本決定で「民法990条4号ただし書前段の規定は遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条違反」と判断されました。既に解決済みの事件(遺産分割協議、調停、審判が終了している場合)については、そのままで蒸し返さないこととされ、まだ解決のついていない平成13年7月以降の事件については、相続分が平等に扱われることとなりました。そして、平成25年9月5日以降に開始された相続に嫡出子・非嫡出子の法定相続分の平等が適用されることになりました。
この最高裁の決定を受け、違憲状態を是正するため、民法900条は、平成25年12月11日に改正され同日付で施行されました。
被相続人の子が、相続開始時に死亡している場合、相続財産はだれが引き継ぐことになるか。本来の相続人の子が相続人になります。民法に代襲相続制度の規定があります。
相続人が死亡しているため、相続人に代わって相続権を持つ人を代襲者または代襲相続人と呼び、本来の相続人のことを被代襲者と呼びます。
被相続人の子供が既に死亡している場合、子供の子供(被相続人の孫)が代襲相続人となります。更に、孫も死亡している場合は、その子供(被相続人の曾孫)が再代襲相続人となります。このように、直系卑属の場合は永久的に繰り返していきます。直系卑属とは、子・孫などで、兄弟姉妹は入りません。
子供も孫などの直系卑属も親などの直系尊属もいない場合で、相続人が兄弟姉妹で場合は、代襲相続は1代限りとなります。(再代襲はありません。)
なお、相続放棄は代襲相続の原因にはなりません。
民法の関連条文
第887条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
第889条 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第887条第2項の規定は、前項第2号の場合について準用する。
※第887条第3項の規定は準用されていません。
第901条 第887条第2項又は第3項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
2 前項の規定は、第889条第2項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。
※前条、第900条は法定相続分が決められています。
相続財産が自動車である場合の相続手続きについては、単独相続する場合・複数相続する場合・売却する場合・第三者に譲渡する場合などが考えられます。売却については、引取り業者が手続きを行います。第三者に譲渡する場合も、いったん相続人に相続し、その後、名義変更することになります。
そこで残りの2つの場合、相続を全員(複数人)で相続する場合と単独相続の場合とについて考えてみます。複数人で相続し共有とした場合、その後の売却・変更の際、全員の同意が必要となることもあり、お勧めできません。
従って、相続人のうち特定の一人が単独で相続することが一般的となっています。
単独相続は、相続人が複数いる場合は誰に自動車を相続するかを遺産分割協議で決めます。そのうえで、以下の書類をそろえます。
①死亡者(被相続人)の除籍謄本と生まれてから死ぬまでの戸籍謄本
②全相続人の戸籍謄本
③遺産分割協議書(相続人が複数の場合。全相続人の実印を押印し、印鑑証明書を添付)
④単独相続人の印鑑証明
⑤申請書
⑥車検証
⑦車庫証明(使用の本拠が変わる場合)
⑧自動車税申告書
⑨手数料納付書
⑩実印
なお、査定価額100万円以下の自動車については、遺産分割協議書に替えて遺産分割協議成立申立書でもいいです。単独相続人の押印(実印)のみで作成できます。
預金に関する相続では、預金口座の凍結・残高確認・名義変更・口座解約などの手続きがあります。
相続財産は、不動産・動産・預貯金・現金・有価証券・その他など広範にわたります。この中の預金(貯金)については、被相続人が亡くなった時点で残高がいくらかを知る必要があります。なぜなら、死亡時点が相続時であるからです。預金口座は、死亡時点で凍結されるべき性質のものです。しかし、実際は、金融機関が預金者の死亡した事実を知った時点で凍結となります。そこで、死亡時から凍結するまでの間に預金残高は増減することもあります。被相続人以外で、預金の管理を任されている身内がいることも多いと思います。仮に被相続人以外で預金を管理している方が、預金の引き出しをしていた場合、相続の放棄・限定承認などができなくなることもありますので注意を要します。死亡したら、なるべく早めに金融機関に連絡し、預金の凍結を依頼すべきです。
預金が凍結されると預貯金の残高確認・名義変更・解約について、金融機関所定の書類を提示し、かつ相続人、その他委任を受けたもの以外は手続きができなくなります。預金凍結後、預金の残高証明書の取得・預金の名義変更・預金の解約について金融機関からどのような書類の提示が求められるか(遺言書のある場合や遺産分割協議書ができている場合は別)は、金融機関によって多少異なりますが、概ね以下のようなものがあります。
①残高証明依頼書、その他変更手続き書類(各銀行所定のもの)
②被相続人の除籍謄本、戸籍謄本(出生から死亡まで)
③全相続人の戸籍謄本
④通帳
⑤印鑑証明書(相続人の代表者のもの)、実印 などです。
被相続人の除籍謄本を除き②③は、法定相続人情報一覧図(写)があれば代用できます。
相続人であるにもかかわらず遺言書で相続がされなかったりすることがあります。例えば、被相続人が遺言書で特定の相続人に100%相続させたり、他人に遺贈するとした場合などです。また、配偶者、子供がいるのに配偶者のみに相続させたり、逆に子供のみに相続させるということもあります。遺言は、個人の単独行為ですから公序良俗に反しない範囲で個人の意思どおり自由に決められます。
しかし、被相続人の財産を頼りにして生活していた相続人は相続分がないと困ってしまいます。そこで法律は、一定の相続人に最低の相続を受ける権利を遺留分として認めています(民法第1031条)。遺留分は、たとえ遺言書があったとしても侵されません。遺留分が侵害されていることを相続人が知った場合、1年以内に裁判上裁判外のいずれでも異議を表明することが出来ます。
遺留分減殺請求をするかしないかは、本人の自由です。但し、1年以内に請求しないと請求権はなくなります。また、相続開始から10年で請求する権利はなくなります。
遺留分減殺請求は、遺留分を侵害している相続人や遺族の受遺者に対して行います。請求の方式は特に定められてはいません。
一般的には、被相続人の財産のすべてが相続財産と考えられています。しかし、法律上では、相続財産とみなされるものとそうでないものがあります。また、民法上と税法上とでとらえかたが異なります。賃借人としての地位や保証人としての立場も相続人が相続財産として引き継ぎます。相続財産とは、具体的には以下のようなものです。
《プラスの相続財産》
宅地・居宅・農地・店舗・貸地、借地権・地上権・定期借地権、現金・預貯金・有価証券・小切手・株券・国債・社債・債権、車・家財・骨董品・貴金属、ゴルフ会員権・著作権・特許権、慰謝料請求権、損害賠償請求権など
《マイナス(負)の相続財産》
借入金・買掛金・手形債務・振出小切手、住宅ローン、預かり敷金・保証金、未払費用・未払利息・未払の医療費・未払の家賃・未納の所得税・未納の住民税、その他未払の税金など
《民法上は相続財産ではないが税法上は相続財産とみなすもの》
被相続人がかけていた生命保険で、被相続人が被保険者、保険金の受取人は相続人に指定されている場合、保険金請求権は相続財産ではなく受取人として指定された人(相続人)の固有の権利となります。従って、民法上では相続財産とはみなしません。しかし、税法上は保険金を相続で取得したとみなし相続税が課税されます。このような保険金は、非課税限度額があるため全額が相続財産となるわけではありません。非課税限度額は「500万円×法定相続人数」で、非課税限度額を超過した部分に対して課税されます。
なお、相続人が相続放棄をしたとしても保険金を受け取ることはできます。
《相続財産ではないもの》
墓、仏壇などの祭祀財産
被相続人の一身に専属した扶養請求権、財産分与請求権、生活保護受給権、国家資格、代理権、国家資格、親権、罰金など
遺言がない場合、遺産を公平に分割するためにはどのようにすればいいのか。難しい問題です。預貯金などであれば、どのようにも分割することができます。しかし、書画骨董などの動産は、そのもの自体を分割することができません。分割したとすると価値が大幅に減少してしまうからです。
土地建物など不動産についても分割すると価値が低下してしまうことが多いです。そこで、複数の相続人で共有とすることが考えられます。共有であれば、持分割合をきめて所有することができます。しかし、不動産を売却等する場合は、共同所有者全員の同意が必要となります。このような相続を数世代にわたって行うと、共同所有者が多数になってしまうこともあります。共同所有者が多数になったり、不明になったりすると、もはや処分不能状態となってしまいます。多くの空き家問題の原因がこうした事情で発生しています。
それでは、遺産分割で分割ができないものについてどのように相続すればいいのでしょうか。相続事件の調停などで、採用されるのが現物分割・換価分割・代償分割という方法です。
現物分割とは、現物それぞれを分割せずにそのまま各相続人に相続させる方法です。この方の方では、公平に分割するのは難しいことがあります。
次の、換価分割とは分割できない遺産をいったん売却して現金化し分ける方法です。売却で価値の減少をすることも考えられます。
代償分割は、単独で相続した者がその代わりに不公平が出た分を他の相続人に現金で支払う方法です。あらかじめ相続するものが他の相続人に支払う現金を持っていることが必要になります。
いずれにしても、遺産分割は難しいと言えます。相続人間の不仲の原因になることもあります。相続が争いごとにならないよう遺言の活用をもっとしたいものです。
被相続人が契約していた賃貸物件があるとき、どのように処理をすればいいか。
被相続人が、土地や建物を借りていた場合、同居していた家族はそのまま住むことはできず、出ていかなければならないのでしょうか。また、同居していなかった場合はどうなるのでしょうか。
民法第896条に「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りではない。」とあります。したがって、賃貸契約に基づく借地権や借家権も相続財産として相続人に相続されます。そこに居住していたかどうかは関係ありません。同居していた場合は、そのままで済むことができ出ていく必要はありません。
新賃借人は、賃借人の地位が相続によって替わったことをことは「賃借人変更通知書」を賃貸人に送る等で知らせる必要があります。また、賃貸契約書に基づき解約することもできます。
遺産の相続は、誰かが必ず相続しなければいけないものではありません。そもそも相続しないという選択もあります。また、積極的に相続したくない(拒否)というケースもあります。
相続には、相続放棄・限定承認・単純承認という3つの方法があります。
相続しないことを法的に正式に表明する方法が、相続放棄です。相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内(民法第915条)に家庭裁判所に必要書類を提出し相続放棄の届出を行い、認めてもらう必要があります。相続放棄が認められると、相続は最初からなかったことになり、代襲者への代襲相続も発生しません。プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続されません。相続放棄は、一人でも行うことができます。
プラスの財産を限度としてマイナスの財産(借金)の責任を持つというように責任の限度を設けて相続する方法もあります。これを限定承認といいます。相続人全員で相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内(民法第915条)に家庭裁判所に申述して行います。
プラス・マイナスすべての財産を相続するのが単純承認となります。3ヶ月以内に相続放棄も限定承認もされない場合に自動的に単純承認したことになります。また、相続財産の一部でも処分した場合や一部を隠したような場合にも単純承認したとみなされます。
相続権がないにもかかわらず相続財産を占有する者がいた場合、本当の相続人(真正相続人)は、相続権を侵害した者に対し、その相続財産の返還を求めることができます。これを相続回復請求権といいます。ただし、期限が定められています。民法第884条には「相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする。」と定められています。
民法の法文上は、相続回復請求権の性質・要件・効果について規定されていませんが、相続権の侵害に対して、相続財産とともに相続人としての地位の回復もできる権利と考えられます。この請求権を持つのは、真正相続人・包括受遺者・遺言執行者などです。
相続人を装って相続権の侵害をしている者は、表見相続人とよばれています。
例えば、被相続人と親子関係がないにもかかわらず子供であることを主張し、相続財産を占有している。更に、戸籍上は相続人であるが、廃除・欠格などで相続権を失っている者も表見相続人となります。
また、自らの相続分を超えて相続財産を占有している共同相続人が相続権を侵害する場合もあります。共同相続人が相続回復請求の相手側となるのは、善意・無過失の場合に限ります。悪意の共同相続人とは、遺産分割で争えばいいからです。遺産分割については期限がありません。
被相続人がなくなり借金などの負の遺産があった場合、相続の放棄をすることができます。では同じケースで、被相続人が遺言で相続人以外に相続財産の遺贈をすることを書いていた場合はどうすればいいのでしょうか。
遺言で相続財産を遺贈(譲与)を受ける者を、受遺者といいます。
受遺者には、包括受遺者と特定受遺者があります。
包括受遺者は、遺産の何分のいくつというように、割合で遺贈を受ける者です。包括受遺者は、相続人と同一の権利義務があり、相続の承認・限定承認・遺産分割・相続放棄の規定が適用されます(民法990条)。自己のために包括遺贈があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に包括遺贈放棄の申述をしなければ、放棄の効果を得ることができません。放棄をしたい場合は、期限内にしなければいけません。
一方、特定受遺者は、特定の財産の遺贈を受けたものであり、遺贈の効力発生後いつでも遺贈の放棄ができます(民法第986条1項)。また、放棄の方法も定めがありません。ただし、少なくとも書面で行うことが確実であるといえます。
《参考》
第990条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
第986条 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
2 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
所有には、自分のものを自分が持っているという普通の状態の他、何人かで一つのものを所有する形態があります。複数所有の形態には、共有・合有・総有などがあります。このうち民法では、共有につき、使用・持分割合、変更、管理、保存行為などについて定めています(第249~252条)。
共有では、使用については持ち分に応じた使用をすることができます。また、売却などの変更は、全員の同意が必要とされます。管理は、持分の過半数で決めなければなりません。保存行為は、各共有者が単独でも行うことができます。また、自身の持分のみであれば売却もでき、持分の分割を請求することも可能です(第256条1)。
これに対して、組合財産などの合有は、持分の処分の自由はありません。更に、入会権などの総有は、共同所有者はものの利用ができるのみで、持分という考え方自体がありません。
相続が発生すると、不動産を複数の相続人が相続すると共有状態になることがあります。建物などは、分割できないため全員の同意がないと土地を含めて売却処分できないということになってしまいます。仕方なく、そのままの状態にしておくと、ゆくゆくは空き家となって社会問題にまで発展してしまいます。
生命保険の活用で遺産分割の公平化を図ることができることもあります。分割する相続財産が限られている場合、分割すべき相続財産がない相続人に相続財産の代わりに被相続人の死亡保険金が支払われることで公平感が生まれます。
では、生命保険の死亡保険金は、遺産分割協議で死亡保険金分だけ相続財産を受け取ったとみなされるのでしょうか。いいえ、生命保険金は、保険金受取人の固有の財産であり相続財産には入りません。
一方、税法上では相続税の課税対象の財産とされています。いわゆる「みなし相続財産」となります。ただし、非課税枠があり、法定相続人の人数に500万円をかけた分までは非課税となっています。
例えば、相続人が3人いる場合に死亡保険金が2,000万円支払われたとすると、
2,000万円―500万円×3=500万円 となり、500万円が他の相続財産に加算され相続税額が計算されることになります。
生命保険の契約によっては、この非課税の扱いができない場合もあります。①非課税扱いのできるのは、契約者・被保険者が被相続人本人であり、保険金の受取人が相続人である場合のみです。また、②相続人が契約者となり被相続人を被保険者として契約し、保険金を受け取る場合は、税法上、一時所得となります。
このように生命保険の活用は、相続対策の重要なものといえます
相続税の納税資金対策という面では、①②を組み合わせることも効果的です。
相続の事前対策には、3つ対策があります。
①遺産分割の対策
本人の生前の意思と想いを家族に伝えるには、遺言があります。確かな遺言と執行のためには、公正証書遺言がより良い選択です。しかし、手っ取り早くということになれば、自筆証書遺言でもいいかもしれません。遺言は、遺産の分割に対する本人の意思実現の方法といえます。本人の意思がご遺族に伝わることで遺産の分割がスムーズにできます。
②資産を圧縮する対策
生前に相続する遺産を少なくしたり、形を変えることにより評価を下げる対策です。課税の対象となる相続財産を下げることで相続の時に支払う相続税を減らす効果が期待できます。
③納税の資金を準備する対策
相続時、ご遺族の相続税納税資金として現金を準備する対策です。生前贈与などがこれに当たります。
以上、どれが欠けても対策としては不十分となります。
相続税の課税対象額を課税価格といいます。
相続税の総額を計算するにあたり、最初に課税価格を求めます。
課税価格は、相続・遺贈の総額となります。被相続人の債務・葬儀費用については控除することができます。相続・遺贈を受けた人が被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けていた場合は、加算します。
生命保険(被相続人の保険料負担、被相続人が被保険者、保険金受取人が相続人もしくは相続人以外の契約の場合)は、遺産分割の対象にはなっていませんが、相続税計算に当たっては「みなし相続財産」として所定の控除(保険金受取人が相続人の場合、500万円×相続人の人数)後の金額が、相続財産に加算されます。
つまり相続税の課税価格は、
相続・遺贈での総額-債務・葬儀費用+3年以内の贈与+生命保険金(控除)・・・①
①-基礎控除(3000万円+600万円×相続人の数)・・・②
となります。
相続税の総額の計算は、
②各相続人が法定相続分を取得したものと仮定して相続税を個別算出し、各相続人の税額を合計します。・・・③
各相続人の相続税額
③×各相続人の課税価格(取得額)÷②・・・④
④-各種税額控除 となります。
代表的な税額控除には、配偶者の税額控除・贈与税控除(すでに納税されているた贈与税)などがあります。ただし、財産を取得した人が被相続人の配偶者、父母、子供以外の者である場合は、税額控除前の相続税額に20%加算をした後、各種税額控除をします。
ちなみに、配偶者は法定相続分以下(2分の1以下)または1億6000万円以下を相続した場合は相続税ゼロとなります。
被相続人の死亡退職金は、相続財産かそれとも相続財産ではないのでしょうか。死亡退職金は、相続財産とみなせられることも受取人固有の財産とみなすこともあります。
国家公務員の場合などは、国家公務員退職手当法第2条の2で遺族の範囲・順位が定められています。内縁の妻が受け取人になることができたり、亡くなった職員の収入によって生計を維持していた人に対し優先的に死亡手当が支給されます。
このように、死亡退職金は故人が受け取った上で遺族に引き継がれるものではなく、受取人固有の財産と言えますので、相続財産には当たらず遺産分割の対象にはなりません(昭和55年11月27日最高裁判決)。
従って、国家公務員退職手当は遺産放棄をした人であったとしても受取人固有の財産として受け取ることができます。
一方、一般の会社の場合は、支給規定がどうなっているかで変わってきます。国家公務員退職手当法に準じた支給規定であれば受取人固有の財産となり、相続財産とはみなされません。要するに、民法の相続人とは異なる範囲・順位で受給権者が決められていれば、受取人固有の権利として死亡退職金を請求することができます。
相続財産とみなされない会社支給規定の例としては、
「退職金の支給を受ける者は、本人またはその遺族で、会社が正当と認めた者とする。遺族とは、労働基準法施行規則第42条ないし45条の遺族補償の順序に従う」
などの規定が多くみられます。
※労働基準法施行規則
第四十二条
遺族補償を受けるべき者は、労働者の配偶者(婚姻の届出をしなくとも事実上婚姻と同様の関係にある者を含む。以下同じ)とする。
2 配偶者がない場合には、遺族補償を受けるべき者は、労働者の子、父母、孫及び祖父母で、労働者の死亡当時その収入によつて生計を維持していた者又は労働者の死亡当時これと生計を一にしていた者とし、その順位は、前段に掲げる順序による。この場合において、父母については、養父母を先にし実父母を後にする。
第四十三条
前条の規定に該当する者がない場合においては、遺族補償を受けるべき者は、労働者の子、父母、孫及び祖父母で前条第二項の規定に該当しないもの並びに労働者の兄弟姉妹とし、その順位は、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順序により、兄弟姉妹については、労働者の死亡当時その収入によつて生計を維持していた者又は労働者の死亡当時その者と生計を一にしていた者を先にする。
2 労働者が遺言又は使用者に対してした予告で前項に規定する者のうち特定の者を指定した場合においては、前項の規定にかかわらず、遺族補償を受けるべき者は、その指定した者とする。