遺言書は、作成時に遺言者に遺言能力がないと無効とされます。遺言能力については、他でも書きました。
判例(いずれも公正証書遺言)では、
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有効とした判例
長谷川式テスト11〜17.5点、遺言者が周囲の人の話をよく理解して、適切な指示ができたことから、正常な判断力・決断力を保持していたとした。(名古屋地裁平9.5.28)
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無効とした判例
長谷川式テスト不能、遺言者はアルツハイマー型老年痴呆により記憶障害・理解力・判断力の低下が著しい。単純でない遺言をする意思能力がない(主治医は、判断力・理解力を4,5歳程度と判断)と判断された。(東京地裁平4.6.19)
などがあります。
たとえ公正証書遺言であったとしても、遺言書作成時に遺言者にその内容を理解できる能力がなかったことが立証された場合は無効となります。
遺言能力があったかなかったかの判断基準には、長谷川式スケールがしばしば使われます。今回は、長谷川式スケールについて紹介します。
長谷川式スケールは、聖マリアンナ医科大学の教授であった長谷川和夫氏が考案した知能評価テストです。正式には、「長谷川式簡易知能評価スケール」と言います。テストの内容は、以下の通り簡易なものです。
1. お歳はいくつですか?(2年までの誤差は正確)
2. 今日は何年の何月何日ですか?何曜日ですか?
3. 私たちが今いるところはどこですか?
4. これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください。
(以下の系列のいずれか1つで、採用した系列に○印をつけておく)
1:a桜 b猫 c電車 2:a梅 b犬 c自動車
5. 100から7を順番に引いてください。
(100-7は?、それからまた7を引くと?と質問する。最初の答えが不正解の場合、打ち切る。2回までやる。)
6. 私がこれから言う数字を逆から言ってください。
(6-8-2,3-5-2-9を逆に言ってもらう、3桁の逆唱に失敗したら、打ち切る。)
7. 先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。
(自発的に回答があれば各2点、もし回答がない場合以下のヒントを与え正解であれば1点)
a植物 b動物 c乗り物
8. これから5つの品物を見せます。それを隠しますので何があったか言ってください。
(時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など必ず相互に無関係なもの)
9. 知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。
(答えた野菜の名前を書いておく。途中で詰まり、約10秒間待ってもでない場合にはそこで打ち切る)
※配点は、省略します。30点満点で24±4は、非認知症です。
このテストは、医学の専門家の指導で実施することを前提に作られています。自己診断をされる方は、問題を出す人・答える人の2人で行うといいと思います。あくまでもひとつの参考ですので、点数が悪いからといってあまり気にされることはないです。正式な検査は、病院で行ってください。
遺言能力のある元気なときに遺言書を書いておけば、上記のような心配はありません。
遺言書が必要と感じたら、すぐに行政書士にご相談ください。
(信行)